JAN
FEB
MAR
APR
MAY
JUN
JUL
AUG
SEP
OCT
NOV
DEC
01
パウエル問題は誰が悪いのか?
Category: 野球
予想外の大騒ぎになっている印象だが…。
ソフトBがパウエル獲得を発表
色々なブログを見たところ、その多くはソフトバンクの対応を非難するものだったが、果たしてそうなのだろうか?この件については30日にパ・リーグの小池唯夫会長が事情を聴くとのことだったが、一応事情聴取は行われたようなので筆者の見解を述べてみたい。
ソフトBがパウエル獲得を発表
ソフトバンクは29日、新外国人選手として前巨人のジェレミー・パウエル投手(31)を獲得したことを発表した。パウエルは01年に来日し、7年間の通算成績は161試合登板、67勝59敗、防御率3・89。昨年、巨人を自由契約になっていた。 オリックスが11日に獲得に合意したことを発表していたが、竹内孝規球団常務最高執行責任者(COO=47)は「周辺確認をし、1月25日に更新されているNPBの自由契約選手リストにもパウエル選手の名前が入っていた。所属を決定づける統一契約書も交わしている」と契約の正当性を強調した。 [ 2008年1月29日16時26分 日刊スポーツ ] |
色々なブログを見たところ、その多くはソフトバンクの対応を非難するものだったが、果たしてそうなのだろうか?この件については30日にパ・リーグの小池唯夫会長が事情を聴くとのことだったが、一応事情聴取は行われたようなので筆者の見解を述べてみたい。
筆者が真っ先に疑問に思ったのは、そもそもバファローズと本当に契約に合意していたのだろうかと言うことだ。バファローズは11日に発表しているではないかと言われそうだが、何を持って合意したかは不明瞭なことは否めない。
選手契約に関わる野球協約の一部分を抜粋すると、
つまり、球団は統一契約書を所属連盟(バファローズの場合はパシフィック野球連盟)に提出して選手承認の申請を行い、会長は承諾後支配下選手の公示をしてコミッショナーへの通告を行う。これが完了して初めて選手契約が完了したことになる。1月25日の自由契約選手リストにパウエル投手の名前が入っていたと言うことはパウエル投手との契約は完了していなかった訳で、どういう経緯を持って合意したと発表したのか大いに疑問だ。
日本は欧米とは異なり契約社会ではなく口約束が罷り通る社会ではあるが、各球団が選手獲得で競合することは当然のことであって、それに関するトラブルを防ぐには明確なルールを持って判断することが求められる。ホークスの行為は違法ではないし、何より今回のバファローズのようなケースを許してしまうと、本来は合意していないのに合意したと発表することで選手獲得の駆け引きの手段として使われ、選手は多大な不利益を受ける訳で、明らかにバファローズの方が悪質なように思える。
但し、ホークスがパウエル投手を獲得しようとしたことにも疑問は無くはない。ホークスの外国人投手はガトームソン投手、スタンドリッジ投手、ニコースキー投手と3人もいて、その上パウエル投手が必要なのだろうか。確かに、斉藤和巳投手、和田毅投手と主力投手が故障持ちで厳しいのは確かだし、どこかの球団のオーナーが「大型補強で腐るようなやつは去れ」と言ったようにプロ野球の世界は競争社会ではある。ただ、チーム編成を考えた場合、やはりベテラン、中堅、若手のバランスは考える必要はあるし、特定のポジションに外国人選手が多くなるのは、長い間勝てるチーム作りを考えたら明らかにマイナスだろう。王貞治監督の花道(かどうか分からないが)を優勝でと言うことなのだろうが。
それにしても、小池会長がどんな見解を示すかと思いきや…。
パウエル契約、オリもソフトも「有効」 両球団で協議へ
率直に言って、バカ丸出しと言うか、一番出してはいけない結論だったように思う。野球協約第182条に「資格職名のいかんを問わずこの組織に属する者は、2個以上の球団に役職員または監督、コーチ、選手として兼職することはできない。」とあるように、二重契約自体があり得ないことな訳で、その状態を作り出した一番の責任は承認権を持っている小池会長にあることになる。
先の契約が有効ならパウエル投手はバファローズの選手になるし、後の契約が有効ならホークスの選手になる。もし判断がつかないのであれば、両者とも無効との見解を示すべきで、それならば両球団による協議で決めろと言うのも理解できる。
ただ、恐らく協議は行われないだろう。31日にホークスはD・J・ホールトン投手を獲得したと発表した。ホールトン投手はパウエル投手の代わりと考えるのが妥当で、パウエル投手はバファローズに入団することになるだろう。これにて一件落着となりそうだが、パウエル投手に矛先が向かう可能性は否定できない。
確かに、パウエル投手(代理人の方が正しいか)がバファローズとホークスを天秤にかけたのは事実にしても、パウエル投手は球団を自由に選べる立場なのだから条件のいい球団に行こうとするのは当然だろう。パウエル投手の実績からすれば5,500万円は少々値切りすぎだと思うし、以前に購入した2億5000万円の不良債権のことを考えれば、ホークス位の条件を提示しても良さそうに思うのだが…。
実はこの問題の一番の要因は、日本人選手と外国人選手におけるダブルスタンダードにあると思う。ご存じの通り、球界のルールブックには野球協約がありこれに基づいて全てが処理されていると思いがちだが、これが厳密に適用されるのは日本人選手だけで、外国人選手には野球協約にはない慣習が適用されることが多い。
例えば、統一契約書にしても、外国人選手にはメジャー方式の契約書が別に作られていて、こちらが本契約書となり、統一契約書は仮契約書のような存在になっている。バファローズのフライングは、統一契約書ではなくメジャー方式の契約書にサインした段階で発表してしまったことによるが、どの時点で内定と見なし発表するかの判断は各球団によって異なるのが現状だ。
そもそも、もしパウエル投手が日本人選手だったら自由に球団を選べる立場にないだろう。自由に球団を選べるのは実質FAだけで、例え球団をクビになったとしても任意引退(他の球団に行く時は元の球団の承認が必要)にされることが多く、自由契約になることは少ない。MLBには任意引退などという制度はないし、これを外国人選手に厳密に適用したら、いい外国人選手は集まらないだろうし、下手すれば裁判沙汰になって日米摩擦へと発展しかねない。
MLBでは一部(ドラフト等)を除き、外国人に対して違うルールが適用されることはない。そういった点からも、日本球界もルールの一本化を目指すのが筋だろう。ただ、慣習の違いや(助っ人という)立場の違いもあって、容易なことではないのは確かだ。しかし、一方は野球協約で、もう一方は慣習や良識に任せると言うのでは、今後も同じトラブルが発生する可能性が大だ。今まで慣習に頼ってきたことを明文化し、各球団が共通の認識を持つことが急務ではないだろうか。
選手契約に関わる野球協約の一部分を抜粋すると、
第45条 (統一契約書) 球団と選手との間に締結される選手契約条項は、統一様式契約書(以下「統一契約書」という)による。(以下略) 第52条 (支配下選手) 選手契約を締結した球団は、所属連盟会長に統一契約書を提出し、その年度の選手契約の承認を申請しなければならない。(略)連盟会長が選手契約を承認したときは、契約承認番号を登録し、その選手がその球団の支配下選手になったことをただちに公示するとともに、コミッショナーへ通告しなければならない。 第53条 (契約の効力) 支配下選手の公示手続きを完了したとき、選手契約の効力が発生する。(以下略) |
つまり、球団は統一契約書を所属連盟(バファローズの場合はパシフィック野球連盟)に提出して選手承認の申請を行い、会長は承諾後支配下選手の公示をしてコミッショナーへの通告を行う。これが完了して初めて選手契約が完了したことになる。1月25日の自由契約選手リストにパウエル投手の名前が入っていたと言うことはパウエル投手との契約は完了していなかった訳で、どういう経緯を持って合意したと発表したのか大いに疑問だ。
日本は欧米とは異なり契約社会ではなく口約束が罷り通る社会ではあるが、各球団が選手獲得で競合することは当然のことであって、それに関するトラブルを防ぐには明確なルールを持って判断することが求められる。ホークスの行為は違法ではないし、何より今回のバファローズのようなケースを許してしまうと、本来は合意していないのに合意したと発表することで選手獲得の駆け引きの手段として使われ、選手は多大な不利益を受ける訳で、明らかにバファローズの方が悪質なように思える。
但し、ホークスがパウエル投手を獲得しようとしたことにも疑問は無くはない。ホークスの外国人投手はガトームソン投手、スタンドリッジ投手、ニコースキー投手と3人もいて、その上パウエル投手が必要なのだろうか。確かに、斉藤和巳投手、和田毅投手と主力投手が故障持ちで厳しいのは確かだし、どこかの球団のオーナーが「大型補強で腐るようなやつは去れ」と言ったようにプロ野球の世界は競争社会ではある。ただ、チーム編成を考えた場合、やはりベテラン、中堅、若手のバランスは考える必要はあるし、特定のポジションに外国人選手が多くなるのは、長い間勝てるチーム作りを考えたら明らかにマイナスだろう。王貞治監督の花道(かどうか分からないが)を優勝でと言うことなのだろうが。
それにしても、小池会長がどんな見解を示すかと思いきや…。
パウエル契約、オリもソフトも「有効」 両球団で協議へ
前巨人のジェレミー・パウエル投手(31)を巡り、ともに「契約に合意した」と主張し合うオリックスとソフトバンクの球団幹部が30日、東京都内のパ・リーグ事務所で話し合った。同リーグでは両球団の契約書とも有効と判断。二重契約と見なし今後は、両球団で協議を進めることになった。 話し合いは、パ・リーグの小池唯夫会長立ち会いのもとで行われた。 パウエルとの契約に関しては、オリックスが今月11日に、獲得を発表。22日には、パウエルがサインした統一契約書がファクスで送られてきたという。一方のソフトバンクは今月中旬から交渉を始め、先週末に単年契約の内容で統一契約書に署名と押印をパウエルからもらったとし、29日に獲得を発表した。これに対し、オリックスがパ・リーグに申立書を提出していた。 [ 2008年01月30日17時42分 朝日新聞 ] |
率直に言って、バカ丸出しと言うか、一番出してはいけない結論だったように思う。野球協約第182条に「資格職名のいかんを問わずこの組織に属する者は、2個以上の球団に役職員または監督、コーチ、選手として兼職することはできない。」とあるように、二重契約自体があり得ないことな訳で、その状態を作り出した一番の責任は承認権を持っている小池会長にあることになる。
先の契約が有効ならパウエル投手はバファローズの選手になるし、後の契約が有効ならホークスの選手になる。もし判断がつかないのであれば、両者とも無効との見解を示すべきで、それならば両球団による協議で決めろと言うのも理解できる。
ただ、恐らく協議は行われないだろう。31日にホークスはD・J・ホールトン投手を獲得したと発表した。ホールトン投手はパウエル投手の代わりと考えるのが妥当で、パウエル投手はバファローズに入団することになるだろう。これにて一件落着となりそうだが、パウエル投手に矛先が向かう可能性は否定できない。
確かに、パウエル投手(代理人の方が正しいか)がバファローズとホークスを天秤にかけたのは事実にしても、パウエル投手は球団を自由に選べる立場なのだから条件のいい球団に行こうとするのは当然だろう。パウエル投手の実績からすれば5,500万円は少々値切りすぎだと思うし、以前に購入した2億5000万円の不良債権のことを考えれば、ホークス位の条件を提示しても良さそうに思うのだが…。
実はこの問題の一番の要因は、日本人選手と外国人選手におけるダブルスタンダードにあると思う。ご存じの通り、球界のルールブックには野球協約がありこれに基づいて全てが処理されていると思いがちだが、これが厳密に適用されるのは日本人選手だけで、外国人選手には野球協約にはない慣習が適用されることが多い。
例えば、統一契約書にしても、外国人選手にはメジャー方式の契約書が別に作られていて、こちらが本契約書となり、統一契約書は仮契約書のような存在になっている。バファローズのフライングは、統一契約書ではなくメジャー方式の契約書にサインした段階で発表してしまったことによるが、どの時点で内定と見なし発表するかの判断は各球団によって異なるのが現状だ。
そもそも、もしパウエル投手が日本人選手だったら自由に球団を選べる立場にないだろう。自由に球団を選べるのは実質FAだけで、例え球団をクビになったとしても任意引退(他の球団に行く時は元の球団の承認が必要)にされることが多く、自由契約になることは少ない。MLBには任意引退などという制度はないし、これを外国人選手に厳密に適用したら、いい外国人選手は集まらないだろうし、下手すれば裁判沙汰になって日米摩擦へと発展しかねない。
MLBでは一部(ドラフト等)を除き、外国人に対して違うルールが適用されることはない。そういった点からも、日本球界もルールの一本化を目指すのが筋だろう。ただ、慣習の違いや(助っ人という)立場の違いもあって、容易なことではないのは確かだ。しかし、一方は野球協約で、もう一方は慣習や良識に任せると言うのでは、今後も同じトラブルが発生する可能性が大だ。今まで慣習に頼ってきたことを明文化し、各球団が共通の認識を持つことが急務ではないだろうか。


- Category「野球」の前後の記事
-
- 野球関連色々 (2010/08/17)
- 野球協約改定は何を目指すのか? (2008/02/02)
- パウエル問題は誰が悪いのか?
- ミッチェル・リポートのナンセンス (2007/12/17)
- アジア選手権優勝の価値 (2007/12/04)
コメントの投稿